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2012年7月3日火曜日

井上寿一 橘考三郎




皆さんは井上寿一氏をご存じでしょうか?

私は前出の戦前日本のグローバリズムを読んで、中々、良く調べてあり、事実に基づく考察とそれに伴う特に中国に対しての戦前の日本が抱いていた思想が垣間見えて面白かったので、急遽、後段の「戦前の国家思想」を発注しました(今日届く予定です)

この人は私より数歳年上の学習院大学の教授です。

この頃の日本思想史と題する読み物(著作とは言い難いもの)はその多くが、無責任と無秩序により戦争を引き起こしたという資料に基づかない勝手な論調が目立ちますが、氏は断じてそうではなく、かの東条さえ最後まで真剣に悩んでいたと書いています。(史実による検証)

さらに皆さん、橘孝三郎という人を知っていますか。立花隆氏の親戚にあたる方なのですが、私は丸山眞男が「似非インテリゲンチャア」と酷評したことで覚えているのですが、5.15事件で変電所襲撃を行い、逮捕された経歴をもつ、農本主義者、反国家主義者とレッテルを貼られている人です。

氏はこの橘孝三郎にも言及しており、戦後の政治システムが何故、国家主義、全体主義へと突き進んでいったかという現実を当時現に存在していた議会制民主主義、社会主義、農本主義らの崩壊と引き換えに台頭したと論じているのです。

そしてその陰には「国民総意」をもたらしたマスコミの責任も挙げています。

すでに何回も申し上げ通り、今の政治家は「民意」「民意」とコンセンサスを求めたがります。

石橋湛山や吉田茂のように、己の信じる事を軽々に口にせず、実行をもって為す政治家は少なくなっています。

先日のデモを見ていて、戦前のマスコミが「民意」に訴えて、理想主義である軍国主義に突き進んだ愚挙を思い起こしたのは私だけではないはずです。

とにかく戦前、戦中の日本についてほとんどが戦争と言う二文字で語られてしまっている訳ですが、もう少し何故そうなったのか考えるためにも是非、氏の著作をお勧めします。