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2013年6月13日木曜日

医療リテラシーと医療ショッピング

医療リテラシーと医療ショッピング

ドクターなら当たり前だよと一喝されてしまうでしょうが、私のように息子も医師の端くれとして偶然にも多くの医療従事者を側辺部に持つものとして心しておかなければならないので書く事にします。
数年前S結腸癌の転移癌で末期の先輩から相談を受けた事があります。先輩は直すつもりで闘病を続けていました。私も何とかならないのかと出来る限りの伝手を頼って、様々な方法を検討したことがあります。残念ながらどの病院でも結果は同じでした。標的遺伝子治療も検討されましたが、時すでに遅しでした。そんなとき、治験について相談していた妻の友人の某有名病院の教授が私に医療ショッピングの無意味さ、そしてそれを行った時の家族の負担について説明してくれました。その時は彼の態度に距離感を感じて少し冷たいなと感じたものでしたが、今となっては良く分かります。医療ショッピングをさせなくて本当に良かったと思っているからです。
もう一件、例をあげると、それも友人の話で、友人が食道癌を宣告されたときに、知り合いのいる都内の癌先端病院に行ったら二つの治療法を選択できる旨を伝えられたそうです。ひとつは外科的手術、もうひとつは放射線治療です。ここで食道癌の手術について簡単に御説明すると、食道癌はやっかいな癌の一つでその理由は転移しやすいからです。食道には多くのリンパ節が存在し、ステージの低い癌でもそのリスクを負わなければならないからです。咽頭癌の手術も受け、その術後の過酷さを知っている友人は出来るなら痛くない放射線で治療しようかと思っていた矢先、共通の友人でもある別のドクターから待ったが掛りました。ドクターが紹介する病院に行ってそれから決めた方が良いという半ば強制的アドヴァイスでした。そして友人の言われるまま診察を受けた大学病院のその教授から出た言葉は、外科的手術を薦めるというものでした。友人はもうひとつ別のこれもまた東の横綱が先般の教授なら、西の横綱と言われるほどの食道癌権威の教授でした。その教授から出た言葉も先般と同じ、外科的手術を薦めるというものでした。さらに彼のところでやっても私がやっても同じだよといわれたそうです。友人が外科的手術を選択したのは言わずもがな、今では食べる事も飲む事も普通の人以上に(笑)にできるように回復しました。
もうおわかりですね。医師でさえ難しい判断を迫られる領域なのに、私達のような素人が軽率に人に別の病院を薦めたり、その治療法が間違っているなどと口が裂けても言ってはなりません。医師たちは矜持を持って医療に従事しているのですから、その事も弁えて行動しなければならないのです。
例え自分の治療が例え上手くいっているとしても、その人に合っているかなどわかりません。医療とはそういう類のものです。
そうした人たちの多くは何故か医療をブランド化しています。あの病院なら大丈夫、あの医師なら大丈夫といった手合いです。
友人の脳外科医に聞いた話ですが、テレビに出ている神の手を持つというドクターでも表に出ない多くの失敗例があり盲信して縋りつくリスクが高いのだと、昨今のワイドショー化した報道に嫌悪していました。
あなたに病院や医師を薦める人がいたら、その人が本当の医療従事者なのか、医療リテラシーを持っているのかよく考えて行動して下さい。医療の選択は命にかかわる事なのですから。ちなみに心臓弁膜症の手術は今では難しいものではありません。それよりも既往症やその人の体力、生活状況を総合して治療法とQOLを考えなければならないのです。







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