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2013年4月19日金曜日

越前蟹


越前蟹

蟹の好みはその人の出身地によって異なるようである。
北海道出身の道産子なら厳冬期の毛ガニが一番うまいというだろうし、南の島国ならアサヒ蟹が美味しいというかもしれない。上海の人に言わせれば陽澄湖のもくず蟹が一番というだろう。

私の場合は間違いなく越前蟹である。越前蟹を食べたのは岐阜に赴任している時だった。私が仕事中の平日、妻と義父が車で越前まで出掛けて生きたままの大きな2匹の蟹を買ってきた。茹で上げて食べたそれは今まで食べたどの蟹より甘みが強く、しっとりしていた。

蟹は同じ蟹でも住む場所によって全く味が変わると言う。ロシアやサハリンの遠洋で獲れるものは半値近く安い。もっともこれらはすぐに冷凍にされるので生ではないのですぐ分かる。近縁にオオズワイガニ、ベニズワイガニ、オオエンコウガニなどもいるが本ズワイガニが一番甘みも強く、各地でブランド化されている。

ズワイガニは楚蟹、津和井蟹と書く。楚とは古語で「すわえ」と読み、細い枝を意味する。なるほどこの蟹の脚はすっとしていて美脚である。もっと脚の長い蟹は他にもいて、戸田で獲れるタカアシガニは1メートル近くもある。一度食べたが大味だっと記憶している。

越前蟹で思い出すのは大食漢で食通の開口健氏である。今年こそは氏の名前が冠された「開口丼」のある、こばぜという旅館に逗留し食べてきたいと思っている。
氏が言うように蟹は食べるのが面倒くさい。この丼のように白いご飯の上に蟹の身がどかっと乗っているのをガツガツと食べたい衝動に襲われるのは無理からぬ話である。

六本木に老舗のステーキハウス瀬理奈がある。ここでは越前蟹のシャブシャブを食べさせてくれる。薄い昆布出汁の澄んだスープにぷりぷりの身をくぐらせて食す。口の中で肉を噛みすっと身を剥がしながらそのまま呑みこめば、口の中に百合の様な蟹肉独特の甘い香りと微かな磯の香りが交互にやってくる。至福のひと時である。

そうそう蟹は何の仲間か知ってました?
答えはクモ。最初に食べた人はさぞ勇気が必要だったのだろうな・・・