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2013年6月12日水曜日

穴守稲荷の天麩羅

穴守稲荷の天麩羅

大学時代の友達に羽田が実家だった人がいた。何回か遊びに行った記憶がある。当時の羽田はお世辞にも治安が良いとは言えない場所だった。夜になると暴走族が爆音を鳴らしながら集まっていたし、喧嘩も絶えなかった。ところが昼間の羽田は違っていた。町工場が並びその隙間に安い定食屋や弁当屋が軒を並べた平和な街だった。私は蒲田で京浜急行羽田線に乗り、穴守稲荷で降りた。
今から思えば24時間電車が走っていた事を思い出す。あれはきっと大晦日だったのだろう。
別の時期の記憶もある。今くらいの梅雨の時期だったと思う。友人の母親が私のために近くの定食屋で丼物をとってくれた。丼物の上には器をはみ出すようなかき揚げがのっていた。
そのかき揚げをよく見るとさくら海老のような小さな海老が入っている。この海老の正体は淡水に生息するぼさ海老と言う種類だ。多摩川で魚とりの経験した事のある人ならピンと来ると思うが、あの透明な小さな海老である。
次の日も友人の母親は私のために丼物をとってくれた。今度はアナゴの天丼だった。
かくして私のボサ海老と穴子の天麩羅の初体験とあいなった訳である。あの少し甘い天つゆと穴子の柔らかい身は初めての江戸前の味だった。
あの青春時代に目にした街はどうなっているのだろう。目と鼻の先の羽田には行くのだが、すぐ隣の穴守稲荷にはずっと行っていない。
友人の家はまだあるのだろうか、そしてその丼物を食べた定食屋はどうなっているのだろうか。

出店 穴守稲荷「食通 ゆたか」