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2013年11月29日金曜日

911礼賛

911礼賛

911を手に入れて3年がたつ。普通なら他の車に触手が動く頃であるがまだまだ飽きが来ないどころか、新しい発見が続いている。
はっきり言っておく911は見栄を張る車ではない。最近はやっと電動になったようだが、私の911のドアミラーの格納は手動である。ダッシュボードの計器類やシートも何だか安っぽい。最近では手の当たるスイッチの表面の塗装が剥げ落ちてきた。内装や仕上げは品質的に見ても国産車より劣る気がする。恐らく車のことを知らない人が見たら、カエルに似た安っぽい車だと思うだろう。このあたりはスリーポインテッドのメルセデスのAMGや跳ね馬のフェラーリには到底及ばない。
では何が魅力なのか。それは運転してみなければ分からないだろう。現在の911は誰でも運転できる車になったとはいえ、車高の低さや3035の扁平率のタイヤを履くために最低でもこうした種類の車の理解が必要だ。それを逡巡して余りあるならば女性でも男性でも楽しめる。
さて車に必要なことは何か。突き詰めれば走って、曲がって、止まる。これだけだ。つまりこの3つのことに特別な思いを入れて作った車が911なのだ。ご存知のようにフラット6を搭載するのは911くらいだ。より大きな馬力を必要とするならばV型エンジンに過給器をつければ良い。ただし、エンジンが大きくなるので大きな格納庫が必要となり、それを収めるボンネットは巨大になるか、フェラーリのように後室を潰してエンジンルームにしなければならない。こうした巨大化したスポーツカーは日本の実情には合わないのではないかと感じる。駐車場には入らないし細い道には侵入できない。専属のポーターでも雇わねばならないかもしれない。そこへいくと911は丁度いい。後輪のオーバーハングに慣れるには時間が必要だが、以外と短いホイールベースが幸いして、ほとんどの段差を解消する。
911のブレーキはよく効く。この車に乗って分かったのだが、いくら電子制御を行ってもフロントに重い物を載せている車が停車するには相当な慣性モーメントが働く。つまり動き続けようと車を前に引っ張る力だ。そこへ行くと911のエンジンはリアにある。しかもコンパクトなエンジンである。ブレーキを踏めばダイブすることなしに車は止まるのだ。このあたりはフェラーリも同様だと思う。
もうひとつの利点はハンドリングの素直さである。あれだけ太いタイヤを履いているのに車体の剛性が良いため、重さを感じない。純正のピレリPゼロロッソからBSに履き替えたらさらにグリップが良くなった。そしてハンドルをある一定角以上で切っているとロックアップしない。これはコーナーで限界近くを走っている時、ロックアップするとトラクションを失いスピンしてしまう事を防いでくれる。さらにアクセルが途中開度を容認してくれる。つまりギアをホールドしてくれるのだ。これもありがたい。
ようするに走っていて、運転が楽しいクルマなのだ。
私はM5にも乗ったことがある。あれはV10エンジンだった。ランボルギーニ・ムルシエラゴにも乗った。あれはV12だった。総じてV10以上のエンジンは高回転型で街乗りの低回転のトルクが不足している。そこへいくと911は例え時速40kmで走っていても実に気持ちいいのだ。
しばらくは911の魅力に贖えないと感じている。果たしてこの車を忘れさせてくれるような車が存在するのだろうか。やはり911の次は911か。