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2014年2月16日日曜日

違和感

四谷にある学校とアパートの往復で四谷界隈を歩くことはほとんどなかった。ところがどうしたことかその日はパチンコ屋のすぐ先の路地を歩いてみたくなった。パチンコで負けたせいか、今でも理由はわからない。
路地は坂になっていて下っている。丁度新宿通を背にして南側に行く道だ。道はうねうねと曲がりながら途中幾つも道は分岐していた。
坂の途中まで下ると右手が崖になっていた。雨水と苔に覆われた無機質のコンクリートの壁が獣の皮膚の表面に出来た潰瘍のように小さく無数に盛り上がっていた。
人気のない木造の家屋化の窓が開け放たれていた。猫がこちらを睨む。夏の日差しも落ち気温が下がっているはずなのに一向に涼しくならない。谷地になっているからなのか風が通らない。身体に汗がべトッとまとわりつく。
臭気が漂ってきた。下水道の匂いだ。どこかに臭気の原因の入り口があるのだろうが見つからない。
振り返ると大きな黒い動物が横切った。猫にしては大きい。ヤツデの葉の陰に隠れてしまった。目だけが光ってこちらを見ていたが、居なくなってしまった。
通りに出て時計に目をやると8時を回っていた。こんな狭い空間に2時間もいたことになる。
後になってその辺り一帯が鮫河橋と言われる東京でも三指にあたる貧民街であったことをしる。谷にくるといつも違和感を覚えるのはあの日の既視感かそれとも風のいたずらか。