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2014年3月5日水曜日

イノベーションのディレンマⅡ

 日本はモノ作りの国だと言われ続けてきた。彼の国の首相も唱えるのだから間違ってはおるまい。日本の手作業や伝統的モノづくりにはもちろん敬意をはらうつもりだ。ところが工業製品にまでその賛美の裾野を広げた場合には一概にはそうとも言えない。

これまで日本を牽引してきた輸出産業である自動車、電気、機械という工業製品は戦後の日本と先進国との経済格差のギャップにより支えられてきた。相対的価値の低い国から相対的価値の高い国への輸出である。その製品が安くて長持ちするとなれば受け入れられるのは至極真っ当な事だと思う。一方、現在の日本はどうなのか。確かに中国は大国であり日本を抜いて世界第二の経済大国ではあるが先進国ではない。実際に中国における一部の国民と民衆の経済格差は増すばかりである。我々はこうした国にモノを売るのだ。1ドル360円のアメリカに売るのではないのだ。このことに留意する必要があろう。

 私の後輩に大手オーディオメーカーの重職を担っているものがいる。日本を代表するこの会社はレーザーディスクなどの新製品で一世を風靡したがこのところ好調だったカーナビも振るわなくなった。何故だろう。
ロサンゼルスでテスラモーターの実車をみた。ハリウッドの日本食レストランの前でタクシーを待っているとドアボーイが後ろのバレーパーキングから運転してきた。黒いその車体は固体というより液体のようで滑々していた。そしてコックピットにはアイパッドが貼り付けられていた。日本に帰りそのテスラを試乗する機会を得た。私がアイパッドと思っていた画面は同じようにダッシュボードの真ん中に配置され、アイパッド同様に操作することが可能だった。

 私は今乗っているメルセデスのカーナビをほとんど使わない。何故なら、あまりに使いにくいからだ。BMWも同様である。カーメーカーが純正として作らせるカーナビは全時代的である。何もなくて国産のカーナビを自由に取り付けられる方がまだ良いと思っていたが、ここに来て自動車メーカー各社がアップルの車載システムカープレイを搭載すると言い出してきた。テスラを見た時からこうなるだろうと未来予想図に織り込み済みであったが以外と早くなりそうだ。

 その企業にとって他の追随を許さない圧倒的技術力をコア・コンピタンスという。アップルやグーグルのそれはもはや既存の企業では追いつけない。テスラもその一つだ。今度2000億円規模でパナソニックとその他数社で自動車用高性能バッテリーを生産する。彼らの考えていることは世界中の自動車の心臓部をテスラ製にすることなのではないか。航続距離500キロ、1時間あたり充電で85キロ、8年または20万キロの保証の出来る電池を作る事はどの他の企業にも真似できないうちにシェアを拡大する。フラット化した世界ならではの戦略ではあるまいか。